#この岩波少年文庫がすごい総選挙
#この岩波少年文庫がすごい総選挙
少し前からTwitterで「#この岩波少年文庫がすごい総選挙」タグのツイートがたくさんあがっているのだけど、
みなさんの思い出深い本たちはもちろんそれぞれで、まだまだ私の知らない本があったことも教えてくれるし、
なにより本が好きだという、その手ばなしの愛情を感じて、みなさんと一緒だというなんとも安心した、和らいだ、満足した気持ちになる。
私がよく読み始めた、と言えるのは高校生のころから。子どものころにも読んでたとは思うけど覚えてない。
背表紙の色が分かれていて、装丁がすっきりとシンプルで、紙の色も落ち着いて、幅も持ちやすい。こうした外観も大事だと思わせてくれた。
いつか、岩波少年文庫の読んだ本たちで本棚を埋めていくことを夢見た。
おこずかいで、好きだと思うものを一冊ずつ買って、あのツルツルした表紙を眺めるのが好きだった。挿絵も原本に忠実にしているところも他の本とは違い、大切にする気持ちになった。
うしろの「そのほかの少年文庫」といった書名の紹介部分も、じっと眺めるのが好きだった。
文庫本やハードカバー、子供向けならもう少しアニメっぽい表紙の本、いろいろあるけど、岩波少年文庫はなんとなく「格がある」「上品」に感じた。それを持つ自分も、世界の名作を読むんだ、としゃんと背筋を伸ばす思いだった。
本を読むことに没頭して、本さえ読んでいれば毎日が幸せで明るく、本の中で世界の広さを知り、冒険し、感情を揺さぶられ、やがて大きな波が来てゆっくりと去るようにふわりと着地した、そういう心の動きを思い出した。
本を読むことの幸せは、私の何ものにも変えられない幸せだったんだ。
大人になって、あらためてあの手触りを思い出し、好きだったものを買い足してみたけれど、あの高校生のころのようには読めないことに愕然となった。ものすごく切迫した、萎縮したような気持ちになった。もう、あのころには戻れない。感性がなくなった、と感じた。淋しいなんてもんじゃない、自分の一部が死んだように感じた。
『くまのプーさん』『不思議の国のアリス』『エーミールと探偵たち』『点子ちゃんとアントン』『ナルニア国物語』『ムギと王さま』『名探偵カッレくん』『あのころはフリードリヒがいた』『モモ』『クローディアの秘密』『思い出のマーニー』『グレイ・ラビットのおはなし』『ティーパーティの謎』『足音がやってくる』『めざめれば魔女』…
( エンデ『はてしない物語』とケストナー『飛ぶ教室』は、高校生の時にはまだ少年文庫に入ってなくて、ケース入りのハードカバーをがんばって買ったことが私のひそかな満足なのです。)
感性は鈍くなってしまったけれど、本を読むことの楽しさは思い出したい。優しい時間を取り戻したい。