ひとは思いこみでできている

思うこと 気づいたこと なんでも書く

「固い・硬い・堅い」文章

本を持っておく、ということは贅沢なことだなぁと思います。それは単行本だけでなく、文庫本やムック本や新聞であっても、置くスペースや購入するお金がなければできないのですから。

電子書籍にはいまだなじめず抵抗があります。本はその手触りや重み、フォントや文字間隔や余白にまで気を遣われていることや、サラサラした紙の感触、カサカサいう音、パタンと閉じる音、休みながら読んで時々目次や表紙を眺めたりするのが「精神的に落ち着く薬」みたいに感じるので、どうしても「物体」としての本が好みなのです。

欲しい本は数多あれど、あ〜買えないなぁ…とよっぽどでないと諦めます。けれどそんな私が自分に単行本を買うのを許している作家が「高村 薫」さんです。(と言いつつ最近は文庫になるまで待てなくて「宮部みゆき」さんの単行本も買ってしまったりしています)

今年の夏頃から、新たに新聞連載が始まったそうで、いざ単行本になるのを今から心待ちにしています。あらすじを読むと、現代社会小説であり、根強い人気の主人公が出てくるものということです。もはやシリーズとなったその主人公も作品ごとに歳を経て、いまや50代だそうで、しかしこんな風に登場人物も私と同じように歳を取る、その姿が読めるということは哀愁も感じつつ、うれしいことです。

高村さんの文章は硬質で読みづらいと聞きます。そして彼女を知ってる人が周りにいない。知ってるか聞いてみてもたいがい高村薫?だれ?という反応です。

「固い・硬い・堅い」と「かたい」のどの漢字を使っても当てはまるような文章は、読み始めた頃はとっつきづらかったですが、今はもう懐かしさと安心感しかありません。新作まで間が空くと、早く高村さんの文章・言葉の洪水に呑まれたい、という気持ちになります。(そして新作まではどうしても間が空きます)

しばらく読んでなくて、今までに出た本を再度手に取るとやっぱり読みはじめは「かたい」なぁという印象。けれど、そうそう、これぞ高村節なんだなぁと心踊ります。

読むのにも力が要る小説が多いので、まとまった時間と心の余裕がないと手に取れない作家ですが、読むたびごとに深い満足感と、文章や言葉の力強さを感じられる作家です。

…でも、単行本で上下2冊というのは毎回結構つらいです(泣)