呪いの言葉
私には姉がいた。写真でしか知らない。
私が生後8ヶ月の時に、自動車にひかれて亡くなった。
私は自分が長女だと思っていた。
母からは「お姉ちゃんとしてちゃんとせよ」と言われ育ってきた。
居心地の悪さを感じながら、妹に対しては、幼いながらもお姉ちゃんとして、必死にその役をしていたように覚えている。
ずいぶん経って、私は第二子だと知った。拍子抜けだった。
私にはお姉ちゃんがいて、でもそのお姉ちゃんはお姉ちゃんの役割をしてないのに。
なんで私だけ?
私には、私を抑えなくてものびのび生きる方向もあったのに。
長女の役割をさせられていたんだ、と感じた。
ある時また、母親から言われた。
「お姉ちゃんのように、親より先に死んではならない」
何度も繰り返し言われた。
私は死ぬ自由も奪われた。
死にたいかどうかはわからないけど、選ぶことさえ、自分で決めることさえ、できなくなった。
人間なんて、死ぬ順番なんて年功序列でもないのに。誰だって明日どうなるかなんてわからないのに。
今になっても尚、立ちはだかる言葉。呪いだ。
そして今になっても尚、呪いは解けない。