ひとは思いこみでできている

思うこと 気づいたこと なんでも書く

緊迫感ある人

こんにちは。今日は本の話です。

 

河合隼雄氏について書かれた本です。

河合隼雄氏が書いた本は、すべてではないですが、見つけたら読む、忘れたら読む、を繰り返してきました。エッセイのような軽めの本でも、河合氏の書いたものならば未知の世界を見せてくれるという信頼で手に取ります。 

この本は、河合氏が書いたのではなく、河合氏と関わりのあった方々がそれぞれの視点や経験から書かれたものです。

河合氏は、ユング派心理学を日本で初めて広めた人で、箱庭療法や夢の分析を取り入れた人ですね。

河合氏自身の生涯についてはほとんど知りませんでしたが、国の機関に関わり多忙な時でも、そして亡くなる直前まで、ずっとクライアントを持つ臨床心理家として活動されていたと知り、驚きました。

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『臨床家 河合隼雄岩波書店 2009/9/11(息子の俊雄氏が編集したものを図書館で見つけました。) 

大学教授や心理学に携わっている方々の話と、文学者や詩人、指揮者、企業会長など文化に携わる方々の話が載っています。

中でも、専門家として実際に心理学に関わる方々が「教育分析」という形で自分自身や、自分の抱える症例についての心理分析を受け、そこでの河合氏の姿や発言を書いているのですが、非常に緊迫感があります。

文体は論文調で硬いのに、内容は小説よりもすさまじく、ダイナミックだと感じます。人の、心(無意識)の中の動きはこれほど大きく激しいものか、と感じます。

 

河合氏は、あのほがらかな笑顔をネットの画像でも見ることができるけれど、実際にはとてもとても厳しく強い、暗部を見据えるような眼差しを持っているんだろう、と感じていたのですが、やはりそうだった。

素人考えですが、人の心に分け入るには、相当な覚悟がいりますよね。自分の心だってよくわからないものなのに、ましてや人の領域なんて。

だから河合氏がよく言ったとされる「わかりまへんな」は真理を突いてるなぁと思うのです。

心理療法家、カウンセラーという人は、ただその相手に覚悟を持って寄り添って、横に並んで一緒に進んで行くしかできないんだろうと思います。

講演の途中で絶句してぶわっと涙が溢れ言葉が出なくなった、駄洒落が好き、フルートを本格的に演奏する、などなど、心のありようの幅の広さが魅力的な方だなぁと感じます。

両極端、陰陽をみずから体現されているように感じます。

 

物語や、児童文学についてやさしい言葉で書かれたエッセイのような本もたくさん出ていますね。やさしい言葉だからって理解できるかどうかは別で、私は理解できてないなぁと思うのですが、人間の心の深淵を覗くような感覚で読むのが面白いです。

折にふれ、また読んでみよう。